主な対象疾患Target disease
うつ病
うつ状態とは、気分、感情、思考、行動など、全般的にエネルギーが落ちていて、日常生活、社会生活に支障が出ている状態です。
- ・気分、感情・・・
気分が憂うつ、気持ちがふさぐ、落ち着かない、意欲がわかない、以前楽しめていたことが楽しめない、物事に関心や興味が持てない、すぐに涙ぐむ、生きていても仕方ない、自分を責めてしまうなど。 - ・思考・・・
考えがまとまらない、物事を決められない、集中力が続かない、同じことをぐるぐる考えてしまう、悪いようにしか考えられないなど。 - ・行動・・・
他人と話すのがおっくう、人混みがしんどい、出かける気にならない、すぐに取りかかれない、些細なミスをするなど。
うつ状態では、身体面にも影響を生じ、眠れない、食欲がない、性欲がわかない、疲れやすい、からだが怠い、からだが痛いなどの症状がみられます。
このような状態が一定期間続き、身体的な疾患、薬剤・精神作用物質の使用などの原因がみられない場合、うつ病が疑われます。
うつ病の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・カウンセリング、認知行動療法、TFTなど
- ・理学療法・・・rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)、ECT(電気けいれん療法)など
- ・生活習慣の改善・・・食事、運動、睡眠リズムなど
躁うつ病
躁うつ病では、躁状態とうつ状態を周期的に繰り返します。
躁状態は、いわゆる気分が高揚したハイテンションの状態で、
- ・誰彼かまわず話し続ける
- ・次から次へとアイディアが浮かんできて止まらない
- ・一晩中眠らず活動してしまう
- ・衝動的に高い買い物を繰り返す
- ・ギャンブルにのめり込む
などの症状が一定期間続き、日常生活や社会生活に大きな支障をきたします。
症状が重くなると、些細な刺激にも反応して怒りっぽくなったり、妄想的になったりもします。
軽躁状態とは、躁状態とまではいきませんが、いつものその人とは違うテンションの状態で、元気で活動的、社交的にみられることが多いようです。
その人にとっては、仕事やプライベートなど、生産性が上がり、充実しているように感じるので、軽躁状態を維持することを好むことが多いですが、そのまま放置しておくと容易に躁状態となりますので、注意が必要です。
一方うつ状態では、気分が落ち込む、何もやる気が起きないなど、うつ病と似た状態となります。
躁うつ病とうつ病では治療が異なるところがあるため、うつ病との鑑別が重要になってきます。
躁うつ病の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・認知行動療法など
- ・心理教育
社交不安障害
社会不安障害は、他人の注目を浴びる可能性のある社交場面で、著しい不安感や恐怖心を抱く状態です。
- ・人前で話すのが怖い
- ・人の視線が気になる
- ・初対面の人が苦手
- ・人と食事をすることが苦手
このような場面では、不安や恐怖から赤面、震え、発汗、動悸などが起こり、次第にそのような場面を避けるようになり、生活に支障をきたすようになります。
一方うつ状態では、気分が落ち込む、何もやる気が起きないなど、うつ病と似た状態となります。
躁うつ病とうつ病では治療が異なるところがあるため、うつ病との鑑別が重要になってきます。
社交不安障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・認知行動療法、TFTなど
パニック障害
パニック障害は、突然動悸や発汗、息苦しさ、めまい、手足のしびれなどが起こり、このまま死んでしまうのではないかという強い不安感、恐怖感が生じる状態です。
このような状態が繰り返されると、いつまた強いパニック発作に襲われるのではないかという不安から、次第に発作を生じやすい場所や、発作を起こしたときに逃げるのが難しい場所(電車や人混みなど)を避けるようになり、日常生活、社会生活に大きな支障をきたします。
パニック障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・認知行動療法、TFTなど
全般性不安障害
全般性不安障害は、パニックほどは強くない漠然とした不安感が、長期間持続するような状態です。
全般性不安障害では、自分や家族の健康、仕事のこと、経済的なことなど、多岐に渡って不安や心配を生じ、自分ではなかなかコントロールできず、日常生活や社会生活に支障をきたします。
全般性不安障害では、
- ・些細な出来事を心配する
- ・イライラが続く
- ・落ち着かない
- ・物事に集中できない
- ・疲れやすい
- ・眠れない
などの症状が現れます。
全般性不安障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・認知行動療法、TFTなど
強迫性障害
強迫性障害は、ある特定の考えが繰り返し湧き起こり、そこで生じる強い不安を打ち消すために、同じ行為を繰り返し行ってしまう状態です。
強迫性障害では、
- ・戸締りが気になって、何度も鍵をかけたか確認してしまう
- ・火の元が気になって、何度もガスの元栓を確認してしまう
- ・汚れている気がして、何度も手を洗ってしまう
などがみられます。
一般的には、本人はそのような考えが馬鹿馬鹿しいとわかっていますが、どうしてもその行為をせざるを得ません。
そうなると、日常生活、社会生活に大きな支障を生じます。
強迫性障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理療法・・・暴露反応妨害法など
適応障害
適応障害は、特定のストレスが原因となって、不安やうつなどの心理的反応を生じたり、仕事や学校に行けなくなったりなどの生活面での支障を生じたりする状態です。
原因となるストレスとして、
- ・死別
- ・離婚
- ・転職
- ・昇進
- ・解雇
- ・進学
- ・失恋
などが挙げられます。
適応障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・環境要因の調整
- ・心理療法・・・認知行動療法、TFTなど
- ・薬物療法・・・症状緩和のため使用されることがあります
統合失調症
統合失調症では、
- ・被害妄想・・・誰かに監視されている、誰かに悪さをされているなど
- ・幻聴・・・自分の悪口を言ったり、自分に命令したりする声が聴こえるなど
といった症状がよくみられますが、
- ・会話にまとまりがない
- ・生き生きとした感情が失われる
- ・意欲が失われ、一日何もせずに過ごす
- ・他人との交流を避けるようになる
などの症状がみられることもあります。
統合失調症の原因は明らかになっていませんが、遺伝的素因と環境的要因の複合によるものと考えられています。
統合失調症は、慢性的に経過することも多く、再発を繰り返すと、次第に社会機能が低下し、日常生活、社会生活に大きな支障をきたします。
統合失調症の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理教育
- ・リハビリテーション・・・デイケアなど
- ・生活支援・・・訪問看護、ホームヘルプサービス、就労支援事業所など
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症では、社会的なコミュニケーション及び対人的な相互関係が困難、行動や興味、活動が反復的で限定である、といった特性がみられます。
言語発達には、遅れがみられる場合とみられない場合があります。
自閉スペクトラム症は、以前は広汎性発達障害と呼ばれていたもので、アスペルガー症候群、小児自閉症などを含みます。
このような特性があると、生活や学校、仕事などの様々な場面で支障を生じるようになり、二次的にうつや不安などの症状を引き起こすことがあります。
自閉スペクトラム症の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・環境の調整
- ・療育
- ・薬物療法・・・二次的な精神症状や併存疾患に対して
注意欠如・多動性障害
注意欠如・多動性障害では、不注意、多動性、衝動性を主とした症状が12歳以前よりみられます。
不注意症状が優位にみられる場合もあれば、多動性・衝動性症状が優位にみられる場合もあります。
不注意症状として、
- ・注意が持続しない
- ・気が散りやすい
- ・忘れ物が多い
- ・物の整理できない
- ・必要な物をよくなくす
- ・物事をやり遂げられない
多動性・衝動性の症状として、
- ・じっとしていられない
- ・しゃべりすぎる
- ・不適切な場面で走り回る
- ・順番を待てない
- ・人の話を遮って話し出す
などがみられます。
このような状態が続くと、対人関係や学校生活などで支障を生じるようになります。
注意欠如・多動性障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・心理社会的治療・・・環境調整、ペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニングなど
睡眠障害
睡眠障害では、
- ・なかなか寝つけない
- ・すぐに目が覚める
- ・目が覚めた後は二度寝できない
- ・朝早く目が覚める
- ・寝た気がしない
などの症状がみられます。
このように、睡眠の量、質ともに悪化すると、日中に眠気が出たり、活動に集中できなくなったり、からだが怠くなったりと、生活に支障が出てきます。
睡眠障害の原因は多岐にわたり、
- ・身体疾患・・・睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、疼痛、喘息、心臓病など
- ・精神疾患・・・うつ病、躁うつ病、統合失調症など
- ・生活環境・・・騒音、暑さや寒さ、交代勤務など
- ・生活習慣・・・飲酒、喫煙、カフェイン、スマホなど
- ・生活のストレス・・・仕事、学校、家族、経済問題など
- ・加齢
などが挙げられます。
睡眠障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・身体疾患や精神疾患の治療
- ・環境の整備
- ・生活習慣の改善
- ・生活ストレスの軽減
- ・薬物療法
起立性調節障害
起立性調節障害では、自律神経の働きの乱れにより、起立時に脳やからだへの血流が低下し、様々な症状を生じます。
症状は午前中に強く、午後からは回復します。このため、「怠け」のようにみられることがありますが、そうではありません。
起立性調節障害は、小学校高学年~中学生にかけて頻度が増加します。
起立性調節障害の症状として、
- ・朝起きられない
- ・午前中食欲はない
- ・午前中やる気が出ない
- ・立ちくらみ
- ・立っていると気分が悪くなる
- ・失神発作
- ・めまい
- ・からだが怠い
- ・疲れやすい
- ・思考力が落ちる
- ・イライラする
- ・寝つきが悪い
- ・頭痛や腹痛
- ・動悸
などがみられます。
起立性調節障害の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法
- ・運動
- ・水分、塩分の摂取
- ・生活リズムの改善
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群では、腸に明らかな炎症や腫瘍などの器質的異常がみられないにも関わらず、腹部不快感や便通異常を生じます。
過敏性腸症候群は、ストレスとの関連が強いことが指摘されています。
お腹の症状に対する不安や緊張が強くなり、社会生活場面を回避するようになると、生活に支障を生じ、二次的に不安障害やうつ病などの精神疾患を発症することもあります。
過敏性腸症候群の症状として、
- ・腹痛
- ・腹部不快感、腹部膨満感
- ・便秘
- ・下痢
などがみられます。
過敏性腸症候群の主な治療法には下記の治療法などがあります。
- ・薬物療法・・・腹部症状や精神症状に対して
- ・生活習慣の改善